ファストフードと聞くと、とっさにいくつかメジャーなブランドが皆さんの脳裏によぎると思います。今回はアメリカのファストフードジャイアント「バーガーキング」のキャンペーン事例をご紹介します。
その前に日本国内でのバーガーキングの動向を少し。日本に1993年に初進出するも、営業不振から2001年に一旦撤退します。その後2007年に再進出し、その際は韓国ロッテリアが日本での運営を行っていました。
昨年2017年にアメリカ本社が、香港の投資会社、アフィニティ・エクイティ・パートナーズとマスターフランチャイズと契約を締結し、2020年までに100店舗以上純増させる計画があるとのことです(※1)マクドナルドの店舗数が2018年6月時点で2,901店舗(※2)で、圧倒的店舗数を誇っていますが、オリンピックが開催される頃「あれ...バーガーキングこんなところにも?」と実感する機会も多くなりそうです。
今回ご紹介するのは、2017年10月に公開されたキャンペーンです。2006年よりアメリカでは10月は「いじめ防止月間」で、この活動は全米で開催されています。なんと世界中の子供の30%が毎年いじめられているとういう事実があるのです。今回のキャンペーンムービーが公開されるやいなや、多くのメディアで取り上げられ、軒並み大きな称賛とともに伝えられました。
・PR WEEK 「Top of the Month: Burger King " bully" video shows top brands can tackle tough topics」
(今月のトップトピック:バーガーキングの“いじめ”動画が見せる、トップブランドが難しいトピックに取り組むことができるということ)
・ADWEEK「Burger King Reveals the Uncomfortable Truth About Bullyng in a Remarkable In-Store Stunt」
(バーガーキングが店頭での驚くべき仕掛けで明らかにした、いじめに関する不愉快な事実)
・TIME「This Anti-Bullying PSA( Public Service Advertising) From Burger King Emphasizes the Importance of See Something, Say Something
(このバーガーキングの反いじめの公共広告は、見過ごすなく声をあげることの大切さを力強く伝えた)
■動画info
タイトル: Bullying Jr.
クライアント: Burger King
ADエージェンシー: David Miami
国:アメリカ合衆国
■ストーリー
LAのとあるバーガーキングの店舗で、中学生の男の子が数人からいじめられています。そしてこのようなスライドが差し込まれました「We bullied Hight school Jr. and a Whopper Jr. to see which one received more complaints 」(我々は中学生とワッパーJr.をいじめました。さあ、どちらか多く反応を受け取ったでしょうか?)と。中学生がいじめられている際に、厨房では調理スタッフがワッパーJr.を拳で潰していじめていました。そのいじめられて潰れたワッパーJr.は、潰れたまま販売されました。そしてテーブルでワッパーJr.の包み紙を開いた客は唖然とし、カウンターに向かうのです。
*ワッパーJr.とはバーガーキングで売られているメニューの名称で、見た目はごく普通のハンバーガーです。
動画はこちらから→
■最後に
皆さんはいじめられている人を見かけたらどうしますか?多くの人がただ暗黙の了解とでもいうように、その場で何の行動も起こさないでしょう。この動画では95%の客が拳で潰されたワッパーJr.の苦情をカウンターで告げました。そしていじめられていた中学生に声をかけたのは、たった12% の客でした。
ワッパーJr.を拳で潰し、それを「いじめ」と称するのはなかなか強引な設定かもしれませんが、インパクトは大変大きく、多くの人が動画に対し「eye-opening campaing」(目を覚まさせるキャンペーンだ)という声が多く寄せられています。ブランドとしてもいじめのように繊細な社会的課題をテーマに扱うことに関しては非常に慎重にならなければならず、バーガーキングほどの影響力を持つ巨大ブランドだからこそ、ブランド毀損にもつながりかねない大きなリスクも想定したうえでの英断だったでしょう。
結果、YouTubeでの公開1週間で90万回近く再生され(現在は5,806,461 回)、動画評価者のうち95%はポジティブな評価となっています。日本もいじめは他の国に劣らず大きな社会課題のひとつです。バーガーキングのように大きな影響力を持つブランドが、公共の利益の為に大胆なコンセプトでPR活動を行い、その活動がブランディングにつながっていくサクセスストーリーを2018年後半は目撃したいですね!
※1 出典:日本経済新聞(検索日:2018.07.17)
※2 出典:日本マクドナルドホールディングス株式会社 セールスリポート